2008年9月24日水曜日

asahi.com(朝日新聞社):社説
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2008年9月24日
08/09/24

公明党―なぜ「自公」かを聞きたい

 自民、民主両党に続いて、第3勢力の公明党も衆院選に臨む新体制を整えた。きのうの党大会で、太田昭宏代表が正式に再選された。

 太田代表はその直後に、自民党の麻生太郎新総裁と政権合意を結んだ。引き続き自民党と連立政権を組み、有権者の審判を受けることになる。

 その決戦を前に、公明党と支持母体である創価学会の内部では士気が上がっているのだという。

 なにしろ、渋る福田首相を押し切って総合経済対策に定額減税を盛り込んだばかりか、衆院の解散の時期や、はては首相のすげ替えまで、公明党の意向が大きく働いたと永田町では受け止められているからだ。

 確かに、この夏からの政局は公明党が主導権を握っていたかのようだった。自民党に付き従うだけなのか、何のための連立なのかと、内部からも批判の声が上がっていたことを思えば、隔世の感がある。

 公明党が、自民党と自由党の連立政権に加わったのは99年10月のことだ。小沢一郎氏が率いた自由党はその後野党に転じたが、自公連立体制は間もなく10年目に入る。

 この間、創価学会に反対論が強かったイラクへの自衛隊派遣をのまされたり、小泉首相の靖国神社参拝の繰り返しで面目をつぶされたりしてきた。ただ、児童手当の拡充をはじめ、公明党が重視する生活関連のいくつかの施策を実現させてきたのも事実だ。

 今や多くの自民党議員にとって、選挙での公明党・創価学会からの支援は当選に欠かせないものになっている。逆に、自民党の協力で八つの小選挙区で公明党の議席を確保している。

 持ちつ持たれつの現状を考えると、自公体制を変える理由はない。これが党内の大勢の意見である。だが、それでは視野が狭すぎないか。

 民主党が力をつけ、2大政党が政権選択を問う総選挙が迫る。この20年ほどの政治改革の流れがようやく形になろうとしている。「清潔な政治」をうたう公明党もこの流れをつくるために努力してきたのではなかったか。

 自民党との連立で総選挙に臨む公明党には、次の問いに答える責任がある。自民党長期政権のもとで、政官業の癒着が進み、膨大な行財政のムダが積もってきた。今のままの連立でそれを排することができるのか。

 麻生自民党と手を携えてこそ実現できるというなら、太田代表はそう判断するわけを堂々と語るべきだ。両党の新しい政権合意を読んでも、その意気込みが伝わってこない。

 自民、民主の勢力が伯仲すれば、第3党としての公明党が日本の針路を左右する場面も増える。持ちつ持たれつの利害だけで判断していては、その責任はとうてい果たせまい。

メラミン問題―海またぐ食の安全管理を

 中国で乳児らに深刻な健康被害を起こしている牛乳や粉ミルクのメラミン汚染の問題が、日本に飛び火した。

 メラミンの混ざった製品をつくった中国の乳業メーカーの牛乳を、日本の大手の丸大食品が肉まんなどの原料として使っていたというのだ。

 こうした食品はスーパーで売られ、病院や福祉施設でも食事、おやつとして出されていた。実際にメラミンが含まれていたのかは検査中だが、丸大食品は商品の自主回収を始めた。

 口に入るものだけに、回収や販売中止などの対策をとるのは当然だ。他社製を含むほかの商品にも問題がないかどうか、十分に確かめる必要がある。

 事件の発端は、中国河北省のメーカーの粉ミルクを飲んだ乳幼児らが腎臓結石を起こして死亡したことだ。子どもを抱えた親たちが病院に殺到し、1万3千人が入院したという。

 この粉ミルクに入っていたのが、有害物質のメラミンだった。さらに中国の他の大手企業の牛乳やヨーグルトにも含まれていることが発覚し、中国の人たちを不安に陥れている。

 メラミンを混ぜると、たんぱく質の多い良質の生乳であるかのように偽装できる。ごまかしの手口として酪農家の間に広まったらしい。

 こうしたメラミン混入は、なぜ、これまで発覚しなかったのか。加工企業や行政機関は知らなかったのか。中国の捜査当局は事実関係を解明し、責任の追及を急いでもらいたい。

 今回の問題は、国境を越えて大量の食べ物が移動する時代の危うさを改めて浮き彫りにした。危険な食品であっても、やすやすと海を越えて広がってしまう。まして加工食品となると、安全な原材料が使われているかどうかを消費者が見極めるのは難しい。

 東南アジアでは中国の乳製品の輸入や販売を禁じる国も出てきた。今のところ日本で健康被害の報告はない。仮に原料にメラミンが混ざっていたとしても、粉ミルクを直接口に入れた場合と比べれば影響は小さいのだろう。

 丸大食品は中国の事件の巻き添えになったかたちだが、今回の教訓は、原材料の一つひとつに至るまで責任を持って安全性を確かめなければならないということだ。それは消費者の安全を守るだけでなく、企業の信用を保つためにも欠かせない。

 とりわけ、いまの日本の食卓は中国製の食品に大きく依存している。だからこそ危険な食品をなくすため、日中間でもっと協力すべきだ。両国の企業間の風通 しを良くして正確な情報を交換し、チェックする。日中の政府もそれを後押しする仕組みをつくる。そうしたことを進めてもらいたい。

 中国からの冷凍ギョーザや国内の汚染米問題で食の安全が揺らいでいる。対策は、大胆に迅速に、である。

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