2008年9月28日日曜日

志野原生氏http://www005.upp.so-net.ne.jp/shigas/WELCOME.HTMより

四百年前の琉球


先に大多喜藩の抱える藩士の屋敷数から琉球王国の官吏数を1000家族程度と推測した。この人数は諸島に配置される文官から武官までを含 むのであるから、四百年近く昔に侵攻してきた島津軍3000にはとても太刀打ちできなかったであろう。首里城警備隊つまり王宮警備隊の人数が総勢百数十人 で三班交代守備、あと兵制らしい組織が記録に見つからぬと云う。
島津の軍勢は朝鮮戦役、関ヶ原の実戦を経験した鉄砲を主兵器とする当時の世界では最強の軍隊であった。琉球の兵器に鉄砲があったかどうかは判らないが、一度も外敵と戦争をしたことの無かった琉球にそんな備えはほとんど無用だったであろう。
李朝朝鮮もそうだったが琉球王国も文官支配で、最高位に武官が顔を出すことがなかったという意味ではより徹底した文官支配であった。戦意に欠けていたという解説を見たが、文官の戦ではさもあろう。
開戦の口実は朝鮮戦役での非協力的態度であるが、実際の理由は貿易開港国の甘い汁を島津が見逃さなかったと云うことである。明は鎖国体制 を取ったために琉球は遠くはマレーシアに及ぶ中継貿易地として栄えるようになった。中国への朝貢船は日本その他で買い集めた物産を中国の物産と取り引きし て持ち帰り商う。当時は豊かな琉球であった。日本は鎖国のために海外との交易は表だってはできない。琉球を隠れ蓑に利潤を吸い上げる。これが本当の理由で ある。
明が滅んで清になると再び中国の海外進出は活発になり琉球の中継基地的商売の旨味も薄れ東南アジアへの交易船も出なくなる。しかし島津の 植民地化政策は貫かれ住民は島津と王朝の二重の過酷な搾取に苦しむ。近年の比較だろうが、農民の耕地は本土の6-7割、しかも土地が痩せていて収穫高は同 じ面積でも本土のやはり6-7割、ただ特産の黒砂糖とうこん(天然黄色染料)によりかろうじて食いつないだと言う。しかし琉球王国は清を宗主国とし実質は 島津の植民地という二重支配形態のまま明治に至り日本の琉球処分で消滅する。明治に入ってからも沖縄人差別は止まない。
豊かで繁栄している国が侵略に対する警戒と対策を怠るとどうなるか。琉球は宗主国明を頼るにも頼れない、つまりいやいやでも朝鮮戦役で秀 吉のお手伝いをさせられた事情を持ちながら、軍備は実質ゼロの中で簡単に島津の軍に王宮を占拠されている。島津侵攻から四百年弱を経てやっと琉球には自由 平等がやってきた。そんな平和主義もあろうが、私ならごめんである。あらゆる侵略予防手段の中で戦力保持は不可欠の必要悪である。侵略の魅力をうち消すに はその国の豊かさに見合う戦力が必要である。

('97/10/20)


泡盛にはまる


テレビのコマーシャルに「女三十にして梅酒にはまる」と云うのがあった。「はまる」の使い方が面白く覚えておった。今度の沖縄旅行で大げさに云うと私は泡盛にはまったのである。
バスガイドから泡盛は三年以上寝かせた古酒でないとと聞いたので、10年ものを買った。豊見城村で造られたものである。まろやかでうまい酒である。いける酒だ。銘柄は沢山あったが買ったのはその一本だけだったから他はどうか判らない。以下のお話はそのおつもりで。
泡盛は焼酎の原型だそうだ。蒸した米に黒麹菌をまき糖化とアルコール発酵を同時に行いあと単蒸留して出来上がりだそうだ。焼酎は黒麹菌に より麹を造ってそれを澱粉質原料に撒く。つまり泡盛の技術に清酒の技術を組み合わせている。その二次原料種類によって米焼酎、麦焼酎、芋焼酎、粟焼酎、黒 糖焼酎などができる。かす取り焼酎は密造酒として悪名高いが、これは清酒の酒粕を原料にする。泡盛はタイから導入されたという。琉球王朝時代の中継貿易が 華やかなりし頃の名残である。
昔千葉に勤めていたころ部下が結婚し土産にフェニックスというハイカラな名前の焼酎をくれた。初めての焼酎であったし好奇心も手伝って急 いで空けたら強烈な臭気に鼻をつままされた。これが元来の焼酎で乙類である。甲類は臭みを精溜分離してしまったホワイトリカーでこちらとのつき合いは結構 永い。
だから泡盛は臭いに警戒していた。しかしいざ蓋を取るとそれほどでもない。湯割りで飲む最近の乙類焼酎には昔ほどの臭みは無いように思 う。乙類にも精溜の技術が取り入れられるようになったのだろうか。泡盛の昔は全く知らないので昔と少しも違わない製法なのかどうか判らないが、ともかく口 にはいるまでの我慢が必要でない酒であったのでまろやかさが減点なしに賞味できたのは嬉しかった。
同じ中国系でも北京から広東あたりまでの中華料理はワールドワイドである。だがベトナム、タイあたりはまだ全世界的とは云えない。これは 味、香りなどであまりに個性的というかあくが強いというか、簡単にははまれない人が多いからである。同じ事で焼酎もワールドワイドどころか最近やっと全国 区に進出しだしたばかりである。
しかし泡盛はトウモロコシのウイスキーのバーボンが世界で飲まれるぐらいだから焼酎よりも早く世界に進出できるのではないかと思う。バー ボンもアメリカのさる高級ゴルフ場のバーで飲んだ本式はドえらく臭かったように覚えている。しかし日本に来るバーボンは別段臭いも悪くない。気持ちだけ元 の臭いが残っていると云った品である。泡盛もその点はもうチョイである。

('97/10/28)


ハブとマングース


沖縄のハブは人間の大敵である。バスガイドさんの話では今でも年に200人は噛まれると云う。昔は600人はおったという。農作業中が多いのは理解ができるが、家の中でやられる割合も多いらしい。これは蛇がネズミ他を追ってあるいは鶏をねらって民家に近づくためである。
今は血清のおかげで滅多に死人は出ない。だがテーマパーク琉球村で聞いた話では毒が回ったとき噛まれた周辺の痛みは熱々の鉄棒をそこに当 てつけた感じでそれはそれは七転八倒の苦しみだそうな。だから血清があっても噛まれるのは桑原桑原である。マングースはインド原産のハブの天敵である。何 とかハブの被害を減らそうと沖縄に輸入し野生化させた。
そのマングースの戦いぶりを見せる闘蛇場が琉球村の呼び物の一つである。ほかでは玉泉洞でも見かけた。いろいろとハブの漢方薬的効能の説 明が続いた後で透明容器の片やハブ片やマングースのいる中間敷居壁をさっと取り除くとマングースが瞬間的にハブの首根っこに噛みついて終わる。効能の説明 が長いはずである。戦いだけだったら0.1秒も掛かっていない。これではショーにならない。物知りがハブが負けることもあるでしょうと問い質す。20対1 の割でマングースが勝つのだそうな。
敷居壁が取り除かれる寸前までマングースは壁越しにハブを見ながら行ったり来たり。ハブは滅多に勝てぬから出てくるときは初経験である。 マングースはもう何回も勝って勝ち方を覚えた経験者である。なんだかハブはかわいそうである。マングースはこんなだからきっと沖縄の野原のハブを食いに 食ってハブを絶滅させそうかというとそうではない。マングースも危険なハブより鶏の方がよいのでこちらの被害も相当なもんだそうである。なかなか自然は人 間の目算どうりには行かない良い例らしい。
頭で理解していてもいざとなると出てこないもので、座喜味城址の内外壁の中間の中庭がどうなっているかと興味を持ち、奥の人の通らぬあた りを目指して歩いている内にはっとしたらブッシュがかなり茂った位置まで来ておった。野ネズミの巣などどこでもあるから観光地だからといってハブが避けて くれるはずはない。知らぬ土地ではガイドさんに真面目について行くに限ると思った。

('97/10/28)

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