2008年9月30日火曜日

朝日新聞社説

麻生演説―選挙モード全開ですが

 麻生新首相の所信表明演説は、異例ずくめだった。なにしろ民主党への質問を五つも並べ立て、あすからの代表質問の場で答えよ、というのだ。

 いつもなら、新しい首相は政治理念を語り、新政権で目指す政策の青写真にもっと力を込めるところだ。だが、衆院の解散・総選挙が目の前に迫る。崖(がけ)っぷちに立つ自民党政権のトップとして、とても大仰な所信を語っている余裕はないということか。

 首相は演説で「あえて喫緊の課題についてのみ主張を述べる。その上で民主党との議論に臨む」と語った。総選挙を念頭に、ひたすら民主党と対決していく姿勢を明確にしたわけだ。

 国会で合意形成のためのルールをつくる用意があるか。補正予算案や消費者庁創設への賛否は。日米同盟と国連とどちらを優先するのか。インド洋での給油支援から手を引いていいのか。

 首相が挙げた質問は、こんな内容だ。補正予算案で対案を示すつもりならば「財源を明示していただく」とたたみかけた。

 民主党の応答の仕方によっては、それを衆院解散の口実にしようという構えもうかがえる。これらが、麻生氏が考える選挙戦の争点ということでもあるようだ。

 だが、いくら有権者の審判を目前に控えた「仮免許」の首相であっても、新政権が目指すビジョンをもっとていねいに語ってほしかった。これでは、はなから選挙管理内閣を自認するようなものではないのか。国民は肩すかしである。

 首相は日本経済について「全治3年」と繰り返す。ではその間、どこまで財政出動の蛇口を緩めるのか。4年目からはどうなるのか。夢物語に終わらないか。希望どころか不安が募る。

 社会保障について、安定財源の「検討を急ぐ」という。このあいまいさにはあぜんとする。基礎年金の国庫負担割合を来年4月から引き上げるための財源手当てにも触れずじまいだ。

 年度内に定額減税を実施するという。その財源への言及はない。民主党には財源を示せと要求しておきながら、これはない。

 福田前首相が約束した道路特定財源の全額一般財源化は実行するのか。道路整備にはどのくらいの予算を振り向けるのか。ここもはっきりしない。

 「強く」「明るく」「よく笑い、微(ほほ)笑(え)む国民」といった政権のキャッチフレーズはちりばめられていたが、結局は決意表明の域を出なかった。

 本会議での一方通行のやりとりではもどかしい。首相が本気で民主党と論戦をしたいなら、予算委員会の審議や党首討論でやればいい。

 こうした首相の挑発に対して、民主党の小沢代表がどう応じるか。面白くなった。




http://pub।ne.jp/shimura/?cat_id=84552&page=2志村建世氏のブログより

ニュース編集の公正とは

NHKニュースの「総裁選挙をめぐる自民党偏重」の問題は、視聴者コールセンターの暴言事件を糸口として、NHK本体に迫ろうとしているようです。大津留公彦さんのブログによると、コールセンターの内部から情報提供があったということで、NHKの下請け事業体の内情が、よくわかります。内部告発は、貴重な導火線になるかもしれません。
 これと別に、昨日の村野瀬玲奈さんのブログでは、「NHKの情報操作」のタイトルで、麻生総理と社民党・辻元清美議員とのやりとりが、夜のニュースと翌朝のニュースとの間で改変されていた例が紹介されていました。そこで、ニュースは編集で化けるということを書いてみます。
 話は古いのですが、安保闘争で全学連と機動隊が国会前で派手に衝突を繰り返していた当時、NHKの世論調査所が面白い実験をしたのを、内部の資料で読み ました。ニュースフィルムを、機動隊に同情的な立場と、全学連に同情的な立場と、2種類の違った編集をして試写したところ、見た人たちの感想は、「全学連 は暴力的だ」「機動隊はやりすぎだ」と、意図した通りに分かれたというのでした。
 街頭を実写した映像でも、編集によってどのようにも意味づけられることは、本質的には劇映画と同じことです。ですからNHKニュースは「両者五分五分に しろ」というのが大原則です。しかし編集マンもディレクターも人間ですから、当時の現場の雰囲気は、6対4ぐらいで政府批判に傾いていたような気がしま す。ですから岸首相は不満で、「テレビカメラを持ってこい、私が直接国民に話す」と要求した武勇伝を残しました。
 私が先日のNHKニュースを見て感じた違和感は、「いくら何でもこれは行き過ぎだ」ということでした。その後に少しは改善したように感じますが、今も総 体として、7対3ぐらいで政府寄りに傾いているように思います。ということは、今はニュースの現場と中間管理職が、この程度を「公正」とする感覚でいると いうことです。それはまた、私の立場が、今の日本でどこにあるのか、という問題でもあるのです。
 報道機関は、政府の広報よりも、社会を正す批判精神を忘れないことの方が、期待されている役割は大きいのです。NHKの報道姿勢は、もっと多くの批判にさらされる必要があると、私は思います。

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