2008年10月30日木曜日

朝日新聞

GM、7~9月の世界販売11%減 トヨタ年間首位濃厚

2008年10月29日22時53分


 【ニューヨーク=丸石伸一】米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は29日、7~9月の世界販売台数が前年同期比11.4%減の211万4760台だった、と発表した。6月までの上半期は同2.9%減だったが、金融危機と景気減速の影響で大幅に落ち込んだ。

 GMは7~9月について、景気減速の影響が「米国から西欧にも拡大した」と説明。不振が続く北米が同18.9%減だったのに加え、上半期まで販売増を維 持していた欧州も同12.3%減と減少に転じた。南米やアジア太平洋地域では販売を増やしたものの、増加率は縮んでいる。

 これで、GMの08年1~9月の世界販売台数は前年同期比5.8%減の665万5751台になった。1~9月のトヨタ自動車グループ(ダイハツ工 業と日野自動車を含む)の世界販売台数は705万1千台で、GMを引き離している。08年の年間でも、トヨタがGMに代わって初の首位に立つのが濃厚だ。

 GMは07年、上半期まではトヨタに世界販売で首位を奪われていたが、1~9月の累計でトヨタを抜き返し、07年の年間でもわずかな差で世界一の座を死 守した。だがその後は、米国での販売減に歯止めがかからず、07年度の年度ベースでトヨタに抜かれ、今春以降も差をつけられている。

 ただ、GMは米同業大手クライスラーとの合併を模索しているとされ、実現すれば世界販売でトヨタを再び抜き返す規模になる。GMは来月上旬までに は7~9月期決算を発表する見込みだが、「具体的な期日は未定」(広報)としている。新たな資金調達策の検討やクライスラーとの交渉の進展などをにらみな がら決算発表の期日を決めるとみられる。


朝日新聞社説

リニア新幹線―大いなる期待と懸念

 JR東海によるリニア中央新幹線の計画が動き出した。同社が「南アルプスを貫く直線ルートでの建設が可能」との調査結果を国土交通省に報告した。今後は技術や採算を調査し、認可手続きを進める。2~3年内に着工し25年開業をめざすという。

 この超伝導リニアモーターカーは、鉄道の世界最高速度、時速581キロの記録をもつ夢の高速技術だ。営業では最高時速500キロで東京~名古屋間を40~50分で結ぶ。将来は大阪までの延伸も想定している。

 東京~名古屋の建設費は約5兆円。JR東海は政府の補助金に頼らず、すべて独力でまかなうという。

 JR発足後も新幹線を自前で建設した例はない。JR東海は稼ぎ頭の東海道新幹線を抱えていて体力があるとはいえ、リニアを自力建設できるなら民営化の成果といえよう。

 リニアの経済効果はきわめて大きい。東・名の大都市圏が直結し、大阪まで延伸すれば関西を含めて一つの経済圏になりうる。東~阪が1時間程度になれば空の客がリニアへ移り、羽田空港に国際線の増便余地が生まれて「空の玄関」も強化できる。

 東海道新幹線が25年には還暦を過ぎる。大補修や大地震で止まったときにリニアはバイパス役を果たす。

 世界初の超伝導リニア技術は、日本の産業を活性化させると期待できる。航空や自動車よりエネルギー効率がいい鉄道は世界各国で見直され、投資ラッシュが始まっている。リニアはそのリード役にもなるだろう。

 ただし、民間会社の事業といっても国民生活や経済社会に与える影響はきわめて大きく、公共性が高い。計画の妥当性を政府や関係機関がきちんとチェックし、国民や関係自治体の合意のもとに進めねばならない。

 利用者や自治体、経済界など幅広い層から意見を聴き、交通政策や産業政策などさまざまな観点から議論する場を設けるべきだろう。

 長野県など自治体はルートや駅の誘致に関心が強く、ややもすると利害調整に追われやすい。利権政治が鉄道建設に介入を繰り返した苦い歴史もある。21世紀の日本にふさわしい鉄道網とは何か。国土や産業のあり方などを幅広く議論してほしい。

 もちろん、初の技術への挑戦だけに、心配も尽きない。

 安全は確保されるのか。乗客や沿線住民の健康面は本当に大丈夫か。南アルプスの環境に悪影響はないか。これから人口減少が進むなかで、採算性に心配はないか。自前とはいえ、建設費の大元は乗客が払う運賃だ。失敗したら、国民的な損失は大きい。

 夢を現実のものにするためにも、このような懸念を一掃し、国民を納得させる責任がJR東海にはある。

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