2008年10月19日日曜日

志野原生氏http://www005.upp.so-net.ne.jp/shigas/WELCOME.HTMより

天城越え


TV正月番組の天城越えを見た。田中美佐子主演2時間のドラマスペシアル、新作である。演出大岡進、あまり聞かない人であった。昔、野村芳太郎監督田中祐子主演の同名の劇映画を見た。印象に残る名作であった。だからついつい比較してしまう。
原作は松本清張の「黒い画集」に収められている同名の短編小説である。著名作家の著作だから入手容易と思ったが、案に相違して困難だっ た。図書館、書店など何軒か見て歩いたが、どこも清張作品の一部しか置いてない。彼は多作に過ぎて全部を置けないらしい。文庫本でも色んな出版社が少しづ つ出している。結局あまり売れていそうもない小さい店舗に残っていたのを見つけ買った。あそこへ行けば岩波だけは揃っているとか、清張は全部あるとか、書 店は店の哲学で特徴を出すのが誇りであったが、私の見たよく売れている店というのは、どこも似たり寄ったりの品揃えであった。本屋のスーパー化であろう。
映画にもTVドラマにもかなりの脚色がある。原作には主人公「大塚はな」の後日に一切触れてないが、映画では裁判後病死し、TVドラマで は30数年を生き抜いて能登の朝市で真犯人の元少年と会話を交わす。前者では真犯人は記録を読んで自殺を試みる。土工殺害が前者では原作通り夜であるのに 対し、後者ではまだ日が高い内に行われる。後者では登場をカットされた事件証人がいる。映画では取り調べに便所に行かせないと云う拷問を使うが、原作には ない。
大人になりかかった少年の殺意がこの小説のテーマであるが、どちらの作品でもよく表現されている。少年は、道連れのきれいで華やかな女 が、流れ者の土工と重なり合って漏らすうめき声を聞いて、母親の不倫の現場を覗いたときの憤りと困惑を思い出す。その女に寂しい道を守ってやると約束した 言葉が頭を過ぎる。女が酌婦という売春婦であることは30数年後になって初めて知る。映画では少年の目で見たはなに近く、TVではより酌婦らしく演出され ている。昨秋バス旅行で付近を通った。地形が判っているから物語の展開が感覚的に飲み込める。
この刑事事件では証拠不十分ではなは釈放される。刑事の事件記録では、少年も同じ9文半の足なのに、女の足跡と思い込んで見逃した反省を 記す。理性では理解できぬ不可思議な少年犯罪が現在多発している。人は誰でも獣性を持っているが、幼少の頃は恣意のままに行動するには力が伴わず、長じて はそれを理性が統御してくれる。そのバランスを崩した姿が少年犯罪である。大正15年という道徳心豊かであった時代を背景にした事件で今日を予言した清張はやっぱり大きな作家だった。

('98/01/17)

http://pub.ne.jp/shimura/?cat_id=84552&page=2志村建世氏のブログより

2008.10.19

減税は有難くない


公明党あたりが圧力をかけて、政府は減税を公約に取り入れ始めていますが、これで景気が回復すると思う人は少ないようで、今朝の「日曜討論」その他の番組でも、概して不評のようでした。減税は、個人にしろ企業にしろ、所得のある人が受けるのですから、所得を失っている家庭にも、赤字の企業にも、全く無縁の恩恵です。
 私は小さな会社を運営してきた長い経験の中で、黒字決算ができたのは、短い好運な時期だけでした。そして黒字が出るような好調なときに払う税金が、高い と思ったことは一度もありませんでした。実家の出版社にかかわっていた時期の記憶でも、業者仲間で「節税はしてもいいが、脱税はしない方がいい。税金を 払って倒産する会社はない」というのは常識でした。利益が上る中から払う税金は、たとえ100%であろうと、会社を倒すことはないのです。赤字が続く中で 会社を存続させることこそが、苦労の大部分でした。
 会社を作ったことのある人には常識でしょうが、中小株式会社の大半は、慢性的に赤字の決算をしているものです。そういう会社にとっては、法人税の引き下 げは全く意味がありません。各種の控除など内部留保の特典も、そもそも利益の出ていないときには使いようもないのです。それよりも、今減税をするのなら、 「消費税の一年間廃止」の方が、同じ予算額の減税でも、ずっと効果があるでしょう。これだったら、確実に消費は上向いて、恩恵はすべての企業にも、国民に も行き渡ります。何よりも気分が明るくなるでしょう。
 それと同時に、すべての価格表示を、本体価格本位に戻すべきです。いくらの値段のものに何%の税金が乗せられているのか、国民に明示するのが公正な政治 というものです。消費税を復活するときは、一律ではなく、生活必需品には低く、または無税とし、ぜいたく品や、普及が好ましくないものには高い税をかける べきだと、私は以前から思っていました。
 また、給与から税金を天引きする源泉所得税は、そろそろやめるべきです。これは戦時経済での強制的な戦費取立てが起源でした。会社は膨大な事務負担もさせられてきたのです。コンピューターの能力が高くなっている現在、政府直轄にできないわけがありません。
 小手先でごまかすような減税策よりも、公明正大な税制へと踏み出すべきです。

毎日新聞

知りたい!:女性誌サバイバル ブーム一転「超氷河期」 やっぱり王道は「読者目線」

 「論座」(朝日新聞社)が10月号で最終号を迎え、「月刊現代」(講談社)が休刊を決めるなど、雑誌がこれまでになく厳しい状況に立たされている。つい数年前にブームを迎えた女性誌も事情は同じ。あの手この手の生き残り策を探っている。【國枝すみれ】

 民間のシンクタンク、出版科学研究所によると、雑誌の推定販売部数は03年に30億7600万冊だったが、07年には26億冊強に。今年8月だけ見ると約1億8000万冊で、前年同月に比べ11・2%も減り、返本率は4割近くに達した。

 原因の一つがネットだ。一日に雑誌を読む平均時間は17・1分で、携帯電話からネットへの接続時間(17・7分)に抜かれた。広告収入も06年以降、ネットが雑誌を上回る。

 特に女性誌は落ち込みが激しい。部数で見ると、00年から07年にかけて11%も減少し、なかでもファッション誌の後退が著しいという。メジャー系では「BOAO」(マガジンハウス)、「GRACE」(世界文化社)が年内で休刊する。

   

 女性誌は数年前からスカーフなど豪華な付録を付けることがブームになったが、今年になって収束の気配だ。同研究所の久保雅暖研究員は「付録で雑誌を手にしても、継続的な読者として囲い込むきっかけにならなかった」と分析する。

 モデルの蛯原友里さん(エビちゃん)ら人気モデルを繰り返し登場させ、06年には68万部を超えた女性誌「CanCam」(小学館)。姉妹版 「AneCan」を創刊したこともあり、現在は約46万部だが、業界では女性誌の優等生と見られている。しかし、同社女性誌編集局の大西豊チーフプロ デューサーは「ライフスタイルやファッションの好みはますます細分化している。森は見てきたつもりだが、細部はカンに頼っていた。これからは木の一本一 本、植生まで知ることが求められています」と語る。

 生き残るための試みの一つがネットとの融合だ。同社は、モデルが動画で登場するCanCamTVなどを展開、作り上げたブランドをウェブ上に移植する試みを進めている。

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 部数を急増させている女性誌もある。キャバクラ嬢を対象にした「小悪魔ageha」(インフォレスト)は「06年の創刊時5万部だった部数は、今 35万部」(中條寿子編集長)という。はやりの化粧法や髪形を紹介するだけではなく、100人以上の読者モデル「age嬢」が登場して「タクシーを降りて 店に入るときが憂うつ」などと本音を語る。

 中條編集長は「世の中、芦屋に生まれて母親からブランドバッグのバーキンをもらうような子ばかりじゃない。自分の力で生きようとする女の子のために作っている」と話す。編集部員には「上から目線」で取材しないことを厳しく課している。読者との距離感を作らないためだ。

 雑誌危機の時代を生き残る秘けつは、当たり前のことではあるが、「読者目線」(久保研究員)に尽きるのかもしれない。


イチロー:WBC監督問題で初言及…「現役困難」に苦言

 野球の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表監督選出問題について、マリナーズのイチローが18日、混迷する現状につい て初めて言及。「最強のチームをつくると言う一方で『現役監督から選ぶのは難しい』では、本気で最強のチームをつくろうとしているとは思えない」と指摘し た。

 日本は06年の前回大会で世界一に輝いた。「もう一度、本気で世界一を奪いにいく。WBC日本代表のユニホームを着ることが最高の栄誉であるとみんなが思える大会に自分たちで育てていく。シンプルなことなんですけどね」と話した。

 イチローは正式要請が届く前に自ら参加の是非について語らない姿勢を貫いているが、現実的には出場の可能性が高い。参加を前提としての発言のようだ。

 「大切なのは足並みをそろえること。(惨敗の)北京の流れから(WBCを)リベンジの場ととらえている空気があるとしたら、チームが足並みをそろえることなど不可能でしょう」。イチローの声は今後、いかに響いていくか。(シアトル共同)


社説:米大統領選 経済再生へ斬新な構想を競え

 9月から10月にかけての金融危機は米大統領選の様相を変えた。9月前半までは共和党のジョン・マケイン上院議員と民主党のバラク・オバマ上院議 員が世論調査の支持率でせりあっていた。危機が広がるにつれオバマ氏が優勢となる。3回のテレビ討論でも傾向は変わらず、選挙戦は最終盤に入った。

 最後の2週間、2人は激しい攻防を続けるだろうが、攻撃や中傷は控え、政策の対立軸を鮮明に打ち出してほしい。

 金融危機はいまのところ、マケイン氏に不利に働いている。オバマ氏は、ブッシュ政権の8年間の失敗でありマケイン氏はその延長だ、と「ブッシュ・ マケイン一体論」で批判し続けた。マケイン氏はテレビ討論で「私はブッシュ大統領ではない」と答えたものの、説得力のある反論や「ブッシュ離れ」の政策を 示していない。支持率の差が広がる要因でもある。

 気になるのは、大恐慌以来の深刻な危機と2人とも認識しているのに、2人の政策が不十分に見えることだ。マケイン氏は企業や富裕層の減税を重視 し、政府の介入より市場の競争にこだわる。上層が潤えば社会の隅々に利益や雇用が広がるという共和党の伝統的な保守思想を受け継いでいるようだ。

 一方、オバマ氏は政府による規制強化や中流・貧困層の減税を主張する。政府支出の拡大だけでは、リベラルの「大きい政府論」の再現にすぎないと懸念も出るだろう。

 大恐慌のあとルーズベルト大統領が登場し、政府の役割を広げるリベラルの時代が続いた。1980年代、レーガン政権が流れを変え、保守革命が始 まった。規制緩和と自由競争こそが繁栄を生むともてはやされた。市場万能主義が金もうけ優先のゆがんだ価値観につながり、今回の金融危機として暴発したの ではないか。だとすれば、30年近く続いたレーガノミクス時代の終わりであり、小手先の対処だけでなく新しい資本主義モデルを構築しなければならないだろ う。

 保守が一時的に退潮するなら、リベラルが新しいビジョンを提示する役割をになう時かもしれない。問題は、新モデルとは何かだれにも見えていない上、危機がどこまで深まり、いつまで続くか読めないことだ。

 世論調査によると、金融安定化法への支持率は3割に満たない。公的資金投入はウォール街だけの利益と批判する人は63%もいる。「国が正しい方向に向かっている」と答える人は7%にまで落ちた。自信に満ちた米国人の楽観主義はどこにいったのだろう。

 両氏は旧来の共和党や民主党の枠組みから抜け出し、米国再生の道を示し有権者の判断を求めてほしい。未曽有の危機を解決するには過去にとらわれない発想の転換が必要だ。

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