2008年10月6日月曜日

朝日新聞社説


地球温暖化と総選挙―「環境」だって票になる

 政権選択の総選挙が近づいているのに、国会では地球温暖化防止の政策論争がいっこうに盛り上がらない。まるで、「洞爺湖サミットで温暖化論議は一段落」 といった静けさである。地球温暖化への対応は、21世紀の経済と社会の発展のあり方を決める重要な選択であるにもかかわらずだ。

 先進諸国の選挙では、党派を問わず温暖化防止対策を示すのが当たり前になっている。ブッシュ政権下で温暖化防止に後ろ向きだった米国では、大統領 選を戦うオバマ氏(民主党)とマケイン氏(共和党)が、それぞれ二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス削減の数値目標を公約に掲げている。

 昨年11月のオーストラリアの総選挙で保守連合から政権を奪った労働党の勝因の一つは、温暖化防止を前面に掲げたことだった。

 こうした国々の指導者の視線の先には「ポスト京都」がある。先進国に温室効果ガス削減を義務づけた京都議定書の2012年までの第1約束期間が今 年、始まった。「ポスト京都」とは13年以降の新たな枠組みのことで、来年末にデンマークである交渉会議で基本的枠組みの合意をめざしている。

 ■ポスト京都を見据えて

 洞爺湖サミットで主要8カ国は「50年に温室効果ガスの排出量半減という目標をすべての国々が共有する」ことで一致した。この長期目標を「ポスト 京都」でどう取り扱うのか。20~30年ごろの中期的な目標をどう設定するのか。残り1年余りの間、中国やインドなどの新興経済国や開発途上国を巻き込ん だ駆け引きが本格化する。

 「ポスト京都」の新たな枠組みはこの先、何十年も参加国を縛る。だからこそ、低炭素社会のビジョンや経済発展のあり方をめぐって、欧米で政策論争が盛んなのだ。

 国内の意見をまとめるのは容易ではない。排出量取引や環境税などは社会や経済の変化をもたらす。産業界や国民には負担増の「痛み」を引き受けてもらわねばならない。さまざまな意見や利害が交錯するなかで、方向を定めるのは政治の仕事である。

 福田前首相が6月に出した温暖化対策の包括提案(福田ビジョン)は「温室効果ガス削減の長期目標は現状比60~80%削減」と数字を示し、国別の削減目標設定も打ち出した。だが、中期目標には触れておらず、低炭素社会への道筋ははっきりしない。

 麻生首相は所信表明演説で「成長と両立する低炭素社会を世界に先駆けて実現する」「世界で先頭をゆく環境・省エネ国家として国際的なルールづくり を主導していく」と述べたが、福田ビジョンをどう発展させるのかのシナリオは見えない。具体的な数字の約束もいっさいなく、説得力が乏しい。

 ■雇用も生む技術開発

 一方、民主党は地球温暖化対策基本法案を国会に提出済みで、9月にまとめた党環境政策大綱で「20年までに90年比25%削減」「50年より早い 段階で60%削減」という中長期の目標を掲げた。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの割合を現在の2%程度から20年までに10%に増やすことをめざ すほか、国内排出量取引や地球温暖化対策税も明記している。

 だが、新税の税率や導入時期は示されておらず、どのような国内排出量取引制度にするかもあいまいだ。

 地球環境を守りつつ、経済成長や暮らしの安定をどう実現していくのか。自民党は数値目標を含めた新たな提案を出し、民主党は約束を実現する具体策を示したうえで、本格的な政策論争を展開してほしい。

 その際に忘れてならないのは、「低炭素社会への転換が遅れると損をする」という視点だ。温暖化防止には技術の開発競争という側面がある。目先のコストを嫌って温暖化対策から逃げているとビジネスチャンスを逃す。

 「環境・エネルギー技術には新たな需要と雇用を生む力がある」(麻生首相)、「環境負荷の少ない技術や商品の開発で雇用を確保する」(民主党)といったプラス面を生かす政策を具体的に示してもらいたい。

 低炭素社会への転換に伴う「痛み」の中身も率直に語ってほしい。

 ドイツは、再生可能エネルギーによる電気を20年にわたりすべて買い取るよう電力会社に義務づけた。それが追い風になり、太陽光発電の設備量で日本を抜いて世界一になった。買い取りに伴うコストは電気料金に上乗せされ、利用者が広く負担している。

 こうしたコストの分担について国民の理解を求めなければならない。

 


■「痛み」への目配りを

 「痛み」に対するセーフティーネットの議論も必要だ。

 今年、米上院で審議され、採決寸前までいった温暖化防止法案は、温暖化対策に伴って電力料金が上がったり、エネルギー多消費型産業の縮小で失業者 が出たりすることを想定し、貧困層への支援や失業者の職業訓練まで考慮する内容だ。こうした目配りのきいた対策が日本でも求められる。

 地球環境は日々の暮らしからは遠い問題で、票になりにくい。そんな思いに政治家がとらわれているとすれば、時代遅れもはなはだしい。

 気候変動というピンチを、経済や社会の発展のチャンスに変える構想力と指導力――。現代の政治家のだれもが備えているべき資質である。


鵜飼俊男の感想

温暖化の関心が低い。随分不要な化石燃料消費を日本人がしている。24時間営業や自動販売機がこんなに多いのは無駄。

民主党が衆議院でも、第一党になっても国民の意識が今のままでは、かわらない。おどおど、人目を気にし自分の意見を主張しない。主張しだしたら、議員役人は考えを改めるだろう。たとえて見れば電車の中でのさばっているならずもの議員役人をだれもなんとも言わない言えない。これが日本人の欠点の部分だ。



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