2008年10月16日木曜日

http://pub।ne.jp/shimura/?cat_id=84552&page=2志村建世氏のブログより

2008.10.16

70代からの情報革命(3)

 紙に手書きするものと決まっていた作文が、キーボードで打ち画面で見る作業になったのは、非常に大きな変化だったと思う。それ以前からも、私は紙に字を書くことには苦労していて、いろいろに工夫もしていた。
 まず、日本文であっても、縦書きよりは横書きの方が合理的であることは、すぐに気がついた。だいたい人間の目は横に二つついているので、上下よりも左右 の方が視線の移動速度は早い。次に私は万年筆で書くことが多かったのだが、縦書きだと改行のたびに手は書いた字の上をこすることになる。インクが生乾きだ と、にじんで汚れるのが気になって、これは毎日のように日記帳で経験していた。横書きなら、手は常に白い紙の上にあるから安心である。
 学生時代には、ノートを楽に早く書く方法はないかと考えた。とりわけ漢字の言葉には時間がかかる。何かの本で「カナ文字会」や「ローマ字会」の存在を知 り、漢字は日本語のガンだと思ったこともあった。そこで、ローマ字でノートをとることにして、一ヶ月ぐらい実行してみた。筆記 体の分かち書きにして、カキクケコは ca ci cu ce co と綴ることにした。k の筆記体は書きにくいので c で代用したのだが、このアイディアは本で読んだのだと思う。このローマ字書きは、けっこう早くて見た目もきれいだったから、充分に実用可能と思われた。と くに会話文の筆記には向いていて、速記をとるような気分だった。
 ただし、欠点は読み取りにくいことだった。やはり問題は漢字で、ローマ字から漢字を連想して意味をとるのに時間がかかるのだった。だから、よく出る単語 は一文字だけ漢字を書いて目印にしたり、いろいろやってみたのだが長続きせず、結局は漢字かな交じりに復帰せざるをえなかった。しかしこれ以後は、横書き の作文に全く抵抗を感じなくなったのは、成果だったかもしれない。
 だから、仕事で台本書きをするようになったときも、特に注文されない限りは横書きにした。横書き400字詰めの原稿用紙の左から5字のところに縦線を入 れ、その部分に画面の絵または説明を書いて、残りの300字を使ってナレーション原稿を書くと、絵コンテを兼ねた台本になる。文字数が300字というの は、標準の早さで読めば一分になるから、作品の長さも二十枚書けば二十分ものというように、すぐ見当がつくので便利だった。この様式は、スライドや映画・ ビデオの台本として、創業から十年以上にわたって私の会社の定式となった。
 しかし鉛筆で手書きした台本は、推敲や改訂を入れようとすると直すのが大変だった。消しゴムで処理できる範囲ならいいが、数行の書き加えでも、切り貼り して何枚にもわたって直さなければならなくなる。修正してもすぐにきれいに清書できる方法はないものかと、私の悩みの種だったのである。

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