2008年10月17日金曜日

http://pub।ne.jp/shimura/?cat_id=84552&page=2志村建世氏のブログより

2008.10.17

貨幣の自由と不安定


金融危機問題のテレビを見ていた妻から、先日、素朴な質問が出ました。「公的資金注入だって、世界中で何十兆円ものお金が簡単に出てくるのは、どう して? お札を印刷すればいいからなの?」 それに対する私の答えは、「いや、お札の印刷なんかしない。コンピューターのキーボードで数字を打ち込むだけ だから、経費はいらないよ」でした。
 日本でも公的資金は用意されていて、私企業の金融機関が欲しいと言えば与えられるようです。その際、タダでやるわけにも行かないので、債権を国が買い取る形にするそうです。その証券も、おそらく立派な紙に印刷ではなくて、コンピューターで入力するのでしょう。とにかくコンピューターは、収支の計算が合ってさえいればいいのです。
 今朝の朝日新聞に「資本主義は本質的に不安定」と題する岩井克人さんの論説が出ていました。私の考えていることと共通する部分が多くて、嬉しくなりまし た。経済を自由に発展させて成長を競わせれば、ついには資本自体が商品となって増殖し、実体経済と乖離します。それは庶民が苦労して稼ぐ商売の利益や、労 働で手に入れる賃金とは異質のものです。アメリカ製グローバル経済のバブル崩壊は、当然の成り行きでした。
 世界は、より健全な経済の再建へと動くでしょう。貨幣は便利なものですが、交換には信用が必要ですから、自由に動かせば動かすほど不安定さも増すので す。資本の過剰な流動に対しては、証券取引税や、為替取引に課税するトービン税の導入などが、真剣に議論されるようになるでしょう。ゲーム的な短期取引を 抑制するとともに、公的財源が確保されるという、一石二鳥の効果が期待できます。
 公的資金の注入は、母子家庭や失業家族にも行ったらどうでしょうか。「働いて稼げるようになったら返す」という証券を、国が買い取ってあげればいいので す。注入された資金は、直ちに消費に回って景気を回復させるでしょう。さらに私は思うのですが、生活に最低限必要な食料品と、住居と、教育と、医療・介護 は、貨幣経済で動かすのをやめて、全国民に現物給付するという方法もあります。それが実現していれば、弱者を犠牲にすることなく、思いきった合理的な税制 を整えることができるでしょう。
 物々交換の素朴な経済活動を始めてから五千年、生きることの権利と働くことの義務を、人類すべてが等しく分かち合える時代が、コンピューターのおかげで実現できる可能性が出てきました。世界の貧困が最終的に解消するときが、見えてきたような気がします。

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